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Rocky LinuxとAlmaLinuxをめぐる最新動向まとめ|RHEL互換ディストロの現在地

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RHEL互換ディストリをめぐる背景——2023年の転換点

2023年6月、Red HatはRHEL(Red Hat Enterprise Linux)のソースコードをCentOS Streamのみを通じて公開する方針を発表しました。それまで誰でも取得できたgit.centos.orgのソースリポジトリへのアクセスが制限され、RHEL互換ディストリビューションを維持してきたコミュニティに大きな波紋が広がりました。

この判断に対してRocky LinuxとAlmaLinuxはそれぞれ異なる戦略で応じ、その違いが2026年現在の両プロジェクトの性格を決定づけています。CentOS 8のEOL以来続いてきた「どちらを使うべきか」という問いは、単なる好みの問題ではなく、互換性の定義そのものをめぐる技術的・組織的な問いへと変化しました。

Rocky Linuxの現状——バイナリ互換を死守する姿勢

Rocky LinuxはRESF(Rocky Enterprise Software Foundation)が主導するコミュニティプロジェクトで、CIQが開発の中核を担っています。2023年の方針転換を受け、RESFはRHELのソースを独自に取得・ビルドするためのインフラ整備に注力しました。UBI(Universal Base Image)コンテナや公開されているSRPMなど、合法的に入手できる複数のソースを組み合わせてRHELとのバイナリ互換を維持する仕組みを構築しています。

バイナリ互換とは、RHELで動作が保証されたバイナリがRocky Linux上でも改変なく動作することを指します。ISV認定ソフトウェアを多数抱える金融系や製造業の現場では、この保証が選定の決め手になるケースが少なくありません。ただし、この互換性の維持コストはプロジェクトにとって恒常的な負担であり、RHEL新版のリリースからRocky版が出揃うまでにある程度のタイムラグが生じることは避けられません。

Rocky Linux 9系と10系の位置づけ

Rocky Linux 9系はRHEL 9に追従する形で継続的なマイナーアップデートを重ねてきました。RHEL 10がリリースされたことを受け、Rocky Linux 10の開発も進行しています。新しいカーネルバージョンへの追従や、SELinuxポリシーの変更、OpenSSLバージョンアップなど、メジャーバージョン間の差分は運用者が事前に把握しておく必要があります。既存の9系環境からの移行は、dnf upgrade による自動アップグレードではなく、再インストールまたは専用移行スクリプトを用いた計画的な手順が推奨されています。

AlmaLinuxの現状——ABI互換への方針転換

AlmaLinuxはCloudLinuxが主導するAlmaLinux OS Foundationによって管理されています。Rocky Linuxとの最大の違いは、2023年の方針転換に対する応答の方向性にあります。AlmaLinux OSFoundationは「RHEL 1:1 binary compatible」という従来の目標を取り下げ、「ABI(Application Binary Interface)互換」を新たな指針として採用しました。

ABI互換は、ソースレベルおよびライブラリのインターフェース互換性を保証するものですが、RHELバイナリそのものとの完全一致は保証しません。AlmaLinuxが独自の判断でパッチを適用したり、RHELとは微妙に異なるビルド設定を選択したりすることが理論上は可能になりました。実際、一部のCVEパッチをRHELより先にバックポートするなど、独自性を発揮する動きが見られます。

AlmaLinux独自の取り組み

AlmaLinuxはx86_64、aarch64、ppc64le、s390xといった主要アーキテクチャに加え、独自のELevateツールによる他ディストリからの移行支援を積極的に整備してきました。CentOS 7やCentOS StreamからAlmaLinuxへの移行パスを公式にサポートしており、現場での採用を後押しする実用的なツールチェーンが充実しています。また、FIPS 140モードやSELinux設定のドキュメントも整備されており、セキュアな環境構築を要求される業種での採用実績も増えています。

両プロジェクトの比較——選定に使える視点

Rocky LinuxとAlmaLinuxを選ぶ際に実務的に重要な比較軸は、互換性の定義・コミュニティガバナンス・エコシステムとの接続の3点です。

互換性の観点では、ISVが発行するRHEL認定を厳密に適用したい場合はRocky Linuxのバイナリ互換路線が有利です。一方、ベンダー認定よりもCVEパッチの迅速な適用や独自カスタマイズを優先したい場合は、AlmaLinuxのABI互換路線のほうが柔軟性があります。

ガバナンスの観点では、Rocky LinuxはCIQという商業スポンサーの影響が大きい一方で、RESFという独立財団が名目上の管理主体です。AlmaLinuxはCloudLinuxの財政的支援を受けながらも、AlmaLinux OS Foundationが実質的な意思決定を行っています。どちらも完全な「純粋コミュニティ」とは言えませんが、スポンサー企業のビジネス判断に左右されるリスクを運用者は意識しておくべきでしょう。

エコシステムの観点では、Ansible Galaxyのロール、Dockerイメージ、CI/CDパイプライン向けのベースイメージなど、周辺ツールとの組み合わせで実績が多いのはAlmaLinuxという声も現場では聞かれます。Rocky Linuxも同様に整備が進んでいますが、ElevateのようなAll-in-one移行ツールの充実度はAlmaLinuxがやや先行しています。

移行・選定の実務的な考え方

CentOS 7はすでにEOLを迎えており、延長サポートが存在するとはいえ新規構築には向きません。CentOS Streamは「RHELの上流」として位置づけられており、安定性よりも最新機能の取り込みを優先する性格があるため、保守的な本番環境への採用は慎重に検討する必要があります。

Rocky LinuxまたはAlmaLinuxへの移行を検討する際、まず確認すべきは現行スタックの依存関係です。ISV認定ソフトウェアやエンタープライズ向けミドルウェアが特定のRHELバイナリを前提にしている場合はRocky Linuxのバイナリ互換路線が安全側に倒れます。一方、自社開発アプリケーションや標準的なOSSスタックが中心であれば、AlmaLinuxのABI互換でも実運用上の問題はほぼ発生しません。

また、商用サポートの必要性も選定基準の一つです。CIQはRocky Linux向けの商用サポート(Rocky Linux Support)を提供しており、CloudLinuxはAlmaLinux向けの有償サポートを提供しています。SLAが求められる環境では、コミュニティサポートだけでなく商用サポートの契約も検討に値します。

2026年現在の注意点と環境差分

RHEL 10系への追従という観点では、両プロジェクトとも9系の安定提供を続けながら10系の整備を進めている段階です。9系から10系への移行はメジャーバージョンアップであり、Python・OpenSSL・glibc・カーネルのバージョンが大幅に変わるため、アプリケーションの再検証が必要になります。特にPythonのデフォルトバージョンやSSL設定の挙動変化は、スクリプトやTLSを利用するアプリケーションに影響を与えることがあります。

SELinuxポリシーの差分も実運用上の注意点です。RHEL 10ではいくつかのポリシーがより厳格化されており、既存のカスタムポリシーモジュールが新しい環境では意図通りに動作しない可能性があります。移行前にaudit2allowsemanageを使って現行の例外設定を棚卸しし、新環境でのテストを十分に行うことが推奨されます。

コンテナ・クラウド環境では、Rocky LinuxとAlmaLinuxいずれも公式コンテナイメージをDocker HubおよびQuay.ioで提供しています。Kubernetesワーカーノードのベースイメージとして使う場合、SELinuxの有効化状態やcgroupv2への対応状況を確認してから採用することが重要です。特にcgroupv2はRHEL 9系以降でデフォルトとなっており、一部のレガシーコンテナランタイムや監視エージェントとの相性に注意が必要です。

最後に、両プロジェクトの動向を継続的に追うという習慣が運用者には欠かせません。RESFおよびAlmaLinux OS FoundationはそれぞれのブログやForumで重要な変更をアナウンスしています。パッケージの変更・非推奨化・セキュリティアドバイザリは公式チャネルを一次情報源として参照し、サードパーティのまとめ記事のみに依存しないことが安定運用の基本です。

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